きのこ狩りの残党

私が見ているアイドルの世界

2023年、私の余花──「滝沢歌舞伎ZERO FINAL」②


滝沢歌舞伎ZERO FINAL」感想文の後半。


もはや初のドームツアーさえ残すところ名古屋だけやというのに、まだ歌舞伎の話してるん私くらいしかおらんやろ、と思いつつ。

「余花」は「遅咲きの桜」という意味で、夏の季語らしい。夏にはギリ間に合ってるからよかった、ということで。



前半はこちら☟





白塗りのお化粧のために阿部さんがタタタッと入ってきたとき、(ハァこのサラストを見るのも最後か)と目に焼き付ける。この先で待っているのは、ヅラを被り、ヅラを取る、ヅラを経て最初のヘアセットとは別の世界ぞ。

私へ、「かつら」と言いましょう。


阿部さんは上手側の先頭でタタタッ。まずスキンケアのために、慣れた手つきで手早く前髪を上げた阿部さん…あああサラストさようなら…〜fin〜

相変わらず大胆にパシャパシャッとスキンケアをしてから白粉をバシャ!っとつけて、ぽんぽんぽんぽん!って、お粉と共に私の好きも舞いそうなレベルのその景色。いい意味で繊細さのない、男らしい手つきかーいい!かーいいよぉ!!(※かわいい)阿部さんの手元はこうでなくっちゃ!


「鼠小僧」の映像が流れているとき、安兵衛の番になったら阿部さんがお化粧の手を止めて客席に「おれおれ!」ってするのだという“かわいいオブザイヤー”級の話を耳にしていたけど、ライビュで見たときも、この日もちゃんとしていて、かわいいというより、そのホスピタリティに心打たれる阿部狂いの女と化した。

だってさ、うれしいよね。「おれだよ」って毎回ちゃんと教えてくれるの。その日しか観られない人もいるかもしれないし、歌舞伎を初めて見る人もいるかもしれないし。でき得る限り変わらず同じものを見せてくれる、そういう人柄がにじんでいる行いに、また「好き!」を貯めてしまった。

「好き!」をお金に換算できるなら、5億は堅い。

換金して家建てたい。


お化粧、今年は最後まで残ってると聞いてたから楽しみにしていて。自担が舞台上にいないと何を見ればいいのかわからず、とにかく目が泳ぐので…(ジャニーズさんを見なさいよ)

そしたら29日はちょうど亀梨くんが見学に来てる日だったのもあって、彼らの話す感じには少し浮ついたようなガチャガチャがあり。結果的に阿部さんがマイクを通して話す声は聞けなかったけど、目黒と2人でなんかしゃべってる地声がふと聞こえてきたのが逆にリアルじゃね…?と、おいしい空気をもぐもぐいただいた。

お化粧タイム終わりにうっすい幕?が降りるとき、微笑んで軽く会釈する阿部さんは、5年前と同じ綺麗なお姉さんの微笑みで胸熱。綺麗なお姉さんは好きですか?大好きです!!!!!!!!!!!!!!!!(即答)



阿部さんの女形はもう何の心配もなく見られる精度で、積み重ねられた経験値を感じる。ROTで「肩を落とすのが大変」って苦笑いしていた阿部さんをバブく感じるほどの佇まい。貫禄さえある美しき姐さん。

SODAには「女形は腰を落とすのが本当に大変で」と書いていたので、「男と女の舞」のときに腰元を見てみたら、しっかり腰を落としていてすごい!!!って、また新しく感動できてうれしい。


そして私はライビュで見た時から、「娘道成寺」がすごく好きで。

生で見る娘道成寺は、なおさら迫力があったなぁ。

かわいらしい仕草で鈴太鼓をトントンと叩いていたのに、突然顔色が変わって、髪の毛をびゅっと出したと思ったらカッカッカッと鐘を登り、頂上で下をキッと睨む阿部白拍子花子たん…。

このびゅっと髪を引っ張って髪型が変わるのって怒りを表すものなのかな?と思っていたら、歌舞伎にはどうも、場面が劇的に変化したときの演出方法で「さばき」というのがあるらしい。お七もびゅっしてたもんね。


阿部さんの顔色が変わったとき、ちょっと背筋が寒くなるくらいの恐ろしさがあって、その迫力に驚いた。えっっ…すご、こわ……阿部さんすごいな…!

鐘を昇る姿も女の人の動きでしかなく。しかも、この鐘の位置がちょうど私の席の斜め前くらいで、鐘の上から見下ろす怒り狂った花子たんがよく見えて、睨んだ顔が最高に美しく、阿部さんがその裏側に積み重ねただろう努力も感じられて最高に好きだった!白拍子花子たん推せる〜!!!!!!!


「FINAL」だから見ることができた創作歌舞伎のオムニバス、私はどれも初めて見たけど、あぁ!もっと観たい!と思うところで次の演目に変わる展開の速さが絶妙で、全部おもしろかったなぁ。少しのお稽古期間でこれを成立させられるのは、きっと、この5年の積み重ねあってこそ。

宮ちゃんの氷の王が圧巻だったのと、ひかるは和製スパイダーマン(移動しながら、手から飛ばす蜘蛛の巣テープを受け取るひかる仕事人すぎた)、佐久間のお七はかわいすぎるのでアクスタください。





組曲」「花鳥風月」、これは「ZERO」になってからの、私が共に歩んできた演目。


組曲は初年度に見て、始まる前のスタンバイの時点で度肝を抜かれた記憶がある。えっそれその体勢、下の人の首、どうなっ…えっ!?!!?首、だいじょぶ…?

私の知っている「ジャニーズ的」なパフォーマンスを超えたものをぶつけられた感覚だった。目の前で繰り広げられるものがすごすぎて、Snow Man何者…と思ったのも懐かしい。(「ジャニーズ的」がいいとか悪いとかいう話ではなくて、事務所特有のパフォーマンスにはそこにしかない良さがあると思ってますけど)


奇禍の最中の2021年には、水を使う演出があったので最初の方の日程でカットされてしまい、去年もなくて、だからまた見られることも、出会って5年を積み重ねた今見たら、自分がどんな気持ちになるのかな?ということも楽しみにしていた。

フルじゃなくて中盤からだった組曲、ザムビの花鳥風月で着ていたシンプルな紺のリネンっぽいゆるシャツと柄パン・裸足との相性がとても良い。少し高い足場に足元からの照明もあって(あったよね?)、過度な演出がなく、そのシンプルな世界が「組曲」の存在感と魅力を余すことなく引き出していた気がする。


いつだったか阿部さんが、体力的にはもちろん精神面で気持ちを切らさずにやり切るのが大変な演目だったと言っていたのが印象に残っているけれど、より責任ある立場や年齢的にも大人になった彼らには、割と余裕でできてしまったりするのかなぁなんてぼんやり考えていたのが大間違いだった。

全っ然そんなことない。

みんな今も変わらず熱くやり切ろうとしていて、ひかるの雄叫びというのか、叫ぶ声が聞こえてくるような距離感で、組曲は相変わらず組曲としてそこに存在するのだと思い知る。何年経っても「熟す」(こなす)なんてことはなく、情熱を途切れさせずにできるんだと、その精神性にも感動した。


阿部さんは下手側の後列にいることが多かったから見えない時間も多かったけど、でもそれでも思っていたよりは見えてうれしい。阿部さんの組曲は長い手足が生かされて、折り目正しくてとっても美しいので。

あと、髪型がポワポワしていた。創作歌舞伎のかつらを経て、お化粧を落として出てきた阿部さんの髪の毛ポワポワでかわいい。えっ!かわいい!!!!

これがこの後、パフォーマンスの熱や汗により、左耳かけと、残りの髪がぐわっと右に持っていかれてデコ出しで、男っぽく凛々しくなってそれもまた…好。ハオ。



「花鳥風月」は初年度は創作歌舞伎の役のまま桜の枝を持って(だったと思う)、途中からは突然ラスサビだけ歌うようになったり(笑ってはいけない滝沢歌舞伎ZERO)、なぜか翔太だけプールのシャワーに溺れるくらい水が直撃していた水浸しの演出や、去年の連獅子も通って、さまざまな形態を経て終着したのはザムビver.だった。それが正解です!!!!!!

白塗りアベンジャーズも良かったけどザムビのやつがいちばん好きだよかっこいいもの(一息)。


ザムビver.の花鳥風月の振りがすごく好きで、阿部さんの美しい構造の身体が余すことなく使われていて、あまりにも「美」。あべふかシンメで始まるところも好きです。まさかこれを生で見られる日が来るとは。


阿部さんは上手側の立ち位置が多めで、組曲と比べて、ものすごく近く感じてしまって(組曲も十分近いのだけども)、心の中でアワアワしっぱなしだった。阿部さんの長い手が描く軌道を、こんな距離から見てしまっていいの!?

首にすごく汗をかいていて、組曲と花鳥風月はそりゃ汗かくだろうけれども、それにしたってあんまり汗かきのイメージのない阿部さんの首元に汗がにじんでいて、生きている事実というか存在感というか、阿部亮平さんの等身大ってそうなんだ…しんどい。


花鳥風月の最後、みんなが歌い出すところらへんで温度が少し上がったような体感があって、ちょっと暑かったそれは、もしかして私が高まっていたのか、でも太鼓のときも感じたから、舞台ならではの脈動のようなものが存在しているんだろうか。


とはいえ、このあとに目の前に阿部さんが来る時間が待っていたので、集中しきれなかったのも事実。あぁ、大好きな花鳥風月、次に備えすぎてほとんど記憶がないことだけを恨む。





五条大橋」、赤い橋がモチーフの演目が「Memories」という名前だったのは今知ったレベルですけど(本当の今の今)(五条大橋って呼んじゃってるもんね)、この演目は私が「ZERO」を初めて見たときと同じ、「私は今、何を見せられて…?」「なるほどわからん」という感覚を全力で味わうもので。


赤い五条大橋が、ぐるんぐるん回る上でのパフォーマンス。思ったより勢いよくぐるんぐるん回っていて、遠心力とか、なんせ身体にとんでもなく負荷がかかるでしょう!?という状況にも関わらず、振りが揃っていたり、流れるようにカノンになっていたり。情緒的で、美しい世界観が圧倒的。

でも気を抜くと、「私は今、何を見せられて…?」が襲ってくる。普通に考えて、まあまあのスピードでぐるんぐるん回る橋の上で踊ってんのは、体幹とかすーーーごいね?


ライビュでは上から映されるカットが多くて、情緒以前にめっちゃ酔った三半規管激弱ヲタク。演舞場で伝わってくる感情的なものを掴んで、やっとある種の理解に到達した気がする。

ただ、私には「ZERO」以前の歴史がないので、この演目が彼らにとってそれがどんな存在か、それを表情やパフォーマンスで感じ取ることが主だった。私に歴史がなくても、それでも彼らは美しく、儚げでありながら、相反して感情に訴えかけるものでもあり。


ぐるぐる回ってる五条大橋を見ながら、なるほどわからんの先で「‪何を見せられてるかよくわからんけど、Snow Manってすごいんだぁ…」と初めて体感したあの日あの場所と同じ気持ちになった。だから、つまり、私にとっての「滝沢歌舞伎ZERO」って“そういうこと”だと思う。

彼らが演出から手がけたこの世界は、継承してきたものとブレないものだったという証明かもしれない。


橋を降りて、ますます降ってくる水の中での傘を使ったパフォーマンスは、傘で跳ねた水がピュッと飛んできたのが臨場感。私の膝の上にはゴソゴソと広げた水避けのビニール(席に着いたら置いてあるやつ)がかかっていたので、おぉ〜ビニールの意味ある〜。

阿部さんは凛とした空気を纏い、粛々と自分の役割を全うする仕事人の顔も垣間見えて、ずっと阿部さんを追っているのに、それでは足りないくらいもっともっと追っていたかった。水に濡れた阿部さんがとても美しく、傘をさす動作も、ピンクの薄衣をかぶる仕草も、全部がすごくきれいで、この景色を目に焼き付けたい、忘れたくないと思った。今こそ一生分の好きを換金したい。

(けど、多分それは今ちゃうで)

そして、傘で宙に浮いた宮ちゃんが真上くらいの勢いでそこにいた。


後々にラウ日で、橋は時計で、反時計回りにぐるぐると回って過去に戻っているのだと教えてもらったけれど、なんて小粋で情緒的なの最高!

佐久間くんが泣きそうになっているとか泣いていたとか、そういうレポを目にしていて、私が入った日もそうやったけど、きっとそれは佐久間くんだけのことではないんだろう。

彼らは橋の上でぐるぐる回されながら、それぞれに時を駆けていたんだな。


そうやって大きく感情を動かしながら2時間のパフォーマンスをすることは、そしてそれが連日続くことは、どんなに大変なことだろうか。当たり前やけど、私にはそんな技術も内面的な感情の豊かさもないから、ただただそのすごさを尊敬する。

自分のパフォーマンスで見ている人の心を動かせるって本当にすごい。それを見ている側として目の当たりにして、改めてすごい人たちに出会ってしまったなと思わざるを得ない。





五条大橋の上での「WITH LOVE」。いよいよ私の滝沢歌舞伎ZEROもクライマックス。

阿部さんは上手側で、とてもよく見えてうれしい。水の演出のおかげで髪はオルバになっており、私は特別オルバが好きなわけではないけど(斜め前髪愛)、でもすごくかっこよかった。「ZERO」になったときに赤にした、最後の衣装も最高に似合ってる!!


阿部さんが一つ一つの動きを丁寧に、心を込めてパフォーマンスしているのが伝わってきて、橋の上に並ぶ人たちを、その中にいる阿部さんを見続けられたのは幸福な時間だった。阿部さんのこと、最後までちゃんと見られてうれしかった。

これまで、座る席や角度によって、こーじだったり某がちゃんだったり、WITH LOVE後半の阿部さんが全く見えないことがあって、それもそれで1つの思い出やけど、でもやっぱり、最後だからこそ阿部さんをちゃんと見られてうれしい。


WITH LOVEを終えて、Snow Man一人ひとりの名前がスクリーンに出て一歩前に出る、そのときの阿部さんの眩しさは格別だった。(このとき上手側の方の立ち位置だったことをマジで神様に感謝した)

そして三方礼の最後、正面を向いてお辞儀してすぐ、お顔が下を向いたときに目をぎゅっとつぶった阿部さんが見えた。

顔に汗なのか水なのかが流れてきたのだと思う。そりゃ流れてくるよなぁ、汗も水も。けど、前を向いているときは全然そんな素振りを見せなかったの、めちゃくちゃプロやん!!!!!!プロを浴びてかっこよすぎて痺れちゃった…SUKI…!


スタオベで立ち上がったとき、立った分だけ舞台がさらに近くてちょっと震える。座ってても近いのに、立つともっと近いィィィ!!!!!!!?!?!?!?!!?

Snow Manが「そこ」にいてびびる。もう、ちょっとこわかった。


「LOVE」は最初、上手側に宮ちゃん、こーじ、阿部さんがいて、やだもうキラキラ笑う阿部さんがこんな近くにこの感じでいるの、私はもうどうすればいいのか…(ど緊張)(最後なのに)。

LOVEになると普段見ているアイドルの阿部さんの顔をしていて、それは演目中には見ることのできないものだから、なんだかホッとしたし、眩しかった。好きだったァァ…

てか阿部さんの存在に気を取られすぎて、あんなにシンプルに一緒にできるようになってる手拍子も手振りも無茶苦茶。いや、裏拍難しいよね(たまに佐久間くんで裏拍を立て直した私)(人生で5本の指に入る贅沢)。


曲後半には阿部さんは下手側に行ってしまったので、遠く斜めから見ていたら、あんまりキラッキラの笑顔してるから「!?」と思ったら、ライビュのカメラに向けての笑顔だとわかって、ほんっっっまに阿部亮平マインドを浴びた。映画館のスクリーンにお届けされるアイドル阿部亮平さん!!!すごいよ、完璧な純度でアイドルを貫いてる!!!好きです!!!!!!!!!!!!


たまに正面に目を向けると激近ポジに宮ちゃんがいて、宮ちゃんに合わせて手がラヴィットの手になったのもいい思い出。(なんか宮ちゃんラヴィットの手になってたよな…?)


明るく楽しい大団円は、FINALにふさわしいものだったなぁと思う。キラキラと降る小判も美しく(私の頭の上には全く降ってこなかったけど)、5年間の集大成としてニコニコと終わる「滝沢歌舞伎ZERO」、お見事でした。





5年間いろんなときがあって、本当に今年はいよいよ歌舞伎に行けないんじゃないかと思った年もあったけれど、でもなんとか毎年見ることができたのは、「幸運」の一言に尽き…ず、いろんな友人が私が歌舞伎に行けるようにと願ってもくれたし、助けてもくれたからで。

その恩返しは足りないばっかりで、いつかお返ししたいなぁと思いながら、まだそのお返しが届かないでいる友人もいて。どうか気長に待っててね、がんばって恩返ししたい。



歌舞伎の阿部さんはいつも特別美しくて、終始綺麗で、多分この世のものではない。そんなレベル。でも間近で見たら、パフォーマンスする中にしっかり汗をかき、仲間とアイコンタクトをし、そして感情を動かしていて、すごく人間だった。そんなギャップしんでしまうわ…用法用量守ってこ?


そして、阿部さんの表現力の豊かさを全力で浴びた。

オープニングの王子様然とした姿から、仇討ちや女形、DA BOMBみたいな「Snow Man」としてのパフォーマンス、熱量を放つ太鼓、組曲、花鳥風月。情緒的に訴えかけるMemories、締めくくりのWITH LOVEとLOVE──見せてくれる顔がどれも違うけれど、でも全部阿部亮平さんの内面から出ているもので、しかも、いつだってさらに進化を遂げている、その表現力に対して私には「すごい」の3文字しか並べられないけど、本当にすごい人を好きになってしまったと、またさらに大好きになっちゃって!!!

“一生分の好き”は一生加算され続けるのかもしれない。


この日見た景色は宝物で、例の如く走馬灯でフルで見たいので、いよいよ将来、私の走馬灯も1年くらいかかるんじゃないかと思われる。



私のすの担の歩みと並んでいた「滝沢歌舞伎ZERO」、お世話になりました。

桜と共に舞っていた人たちを、その中で私の目にひときわ煌めく阿部さんを見つめ続けられた春は、いつも美しく少し苦く、忘れられない5年間です。


楽しかったね〜!ありがとう!





終演後、くまとお酒を飲んだ帰り道に雨が降ってきたので、かばんに突っ込んでいた水避けのビニールを頭の上に広げた。春の東銀座のヲタク愉快すぎるだろ。これもまた、春になったら思い出すだろうな。