きのこ狩りの残党

私が見ているアイドルの世界

2度目の初恋が成仏した話


「初恋は実らない」と、昔の人が言っていたのを思い出した。

これ、今も言うんかな。令和やぞ。


私が某King & Princeのファンになったのは4年前、平野紫耀くん主演の『花のち晴れ』を見るうちに(平野くんって…よくない?)となり、忘れもしない9話、平野くん演じるハルトの「泣くかパンツ見せるかどっちかにしろよ」という台詞で、なんだかわからんが「…好き!」となった。

いや、落ち方の癖。

いわゆる花晴れ新規と呼ばれるやつだった。


当時は某嵐の某櫻井翔さんが好きで、それはデビュー時からの長い時間をかけたものであり、それもあってか某嵐以外の事務所のアイドルのことはあんまり知らなかった。

1年に1回当たればコンサートに行くくらいの緩さで、ドル誌を読むこともなく、少クラを見ることもなく、今思えば本当にのんびりしたもの。この先も別にほかのアイドルを好きになる気もしておらず、特別欲してもいなかった。周りにもそういうスタンスの人は多かった気がする。


そんな、ゆるofゆるなヲタク生活の中でキンプリちゃんのデビューをふと耳にして、『シンデレラガール 』が良すぎて驚き、興味本位で花晴れを見て平野くんに落ちる。

世界が急変した。

毎週少クラだなんだと見るようになり、HDDレコーダーは瞬く間にぱんっぱんになった。平野くんのことをツイートしたくて、放置していたツイッタランドの奈良梅子垢を頻繁に動かすようにもなった。


そのうちに、私のここ数年の緩いヲタク生活は「縁側でお茶」くらいの超絶隠居スタイルだったことに気付く。どんだけお婆やったのか。

録画した歌番組のシンデレラガールを何度も何度も見るうちに、家族も気付くレベルで肌艶が良くなったのには笑った。

King & Prince、マジモンの美容液じゃあ!!


結果から言えば、キンプリのファンでいたのは約半年。帝国劇場の『ジャニアイ』に行くころ、時を同じくしてまだ6人だったSnow Manと出会って大好きになってしまい、私は突然すの担になった。

友達に「平野担で入って、阿部担になって出てきた帝劇」と呼ばれている。

最初は掛け持ちするつもりだったけど、私の不器用さではそれは無理だった。もうどう足掻いても、すの6が、阿部さんが大好きで、私の世界に王子たちを追いかけるキャパがなく、平野担の私というものはそのままふわ〜っと消えていった。


半年の間に私がキンプリの現場に行ったのは1stコンと帝劇だけで、過ぎてみれば本当に一瞬のもの。

何かキンプリちゃんに対する思考を深めることができたわけでもなく、振り返ると平野くんの何を知っていたのだろうという気持ちもあって、「平野担」を名乗るのもおこがましいレベルだったなぁとずっと思っていた。

ただ、キンプリちゃんに出会ってなければ私は阿部さんと出会ってはいなくて。そしてそのころに出会ったお友達が今の私のヲタクとしてのお友達のほとんどであり、だからあの6ヶ月は私にはめちゃくちゃでかい意味があった。

キンプリちゃんなくして今の私はいないと、大袈裟でもなく、そういうもの。





僭越ながら私は平野くんを元カレと呼んでおり、僭越が過ぎますね本当にすみません、でもそうやって呼んでいて、唐突に過ぎ去ってしまった6ヶ月のことはたまに思い出していて、なんとなく、またもう一度くらい元カレに会ってみたいなぁと思っていた。

そこには別段深い意味はないのと、この元カレ呼びは本当にキモい。良くない。


某渡辺担の某くまは元は友達の知り合いで、キンプリちゃんの1stコンのチケットを譲ってもらったことをご縁に、お互いがキンプリ担として出会っている。というのは何度か書いた気がするけど、今回もくまが連れて行ってくれた。

くまと並んでキンプリちゃんを見るのは初めてで、不思議だよなぁと思う。4年前の私が知ったらびっくりするわ。

当選早々にホテルを予約、「横浜に行けるなら、中華街にも行くし鎌倉にも行く!」と完全なる友達との秋の遠足オプショナルツアー「Made in」。私は全力で彼らに対して気を抜いていた。


9月18日、台風に追いかけられるような形で横浜に向かう。突然現れた台風14号…最初は小さかったくせに、いつの間にか強烈な勢力に育ってた14号…おかげで土壇場で泊まりはなくなり、私の中華街と鎌倉は台風の渦に巻き込まれて消えた。

何してくれとんねん14号!


駅から横アリまで移動するとき、我こそは台風!と横殴りに殴ってくる風と雨で、私とくま、もう無。無の境地。いや、こっちまだ台風きてないはずやん。右フック打つごとく変な雲の形すんな14号!!

ビル沿いを歩いて雨をできる限り避けつつ、横アリまで10分ほどかかったかな。それなりに濡れた我々はダメージによって「3年前のSnow Man単独ぶりの横アリだあ」みたいな感慨も何もなく、Aぇちゅーぶの真似して撮りたかった写真も撮れず、粛々と小さな折り畳み傘を畳み、ヲタクたちでごった返す入り口をあわあわと進む。


ゲートを抜けたら、チケットを見たくまの目がギンギンしだして、(これはきたかな?)と思ったけど台風に煽られた私はまだそこに到達できずぼーっと見ていたら「きたよ!センターだよ!」とギンッギンにギンッギンしだしたくま。

センターキターーー!!ギンッギン!!!

センター席は俗に言うアリーナ席という認知やけども、地方会場でいう「アリーナ席」がメジャーなのか、でもここは都心に近い、かの有名な横浜アリーナやぞ!こっちが主流なんか!!?よくわからんな!どうでもいいけど!こーじも知らんかったしな!3年前の単独のときな!関西人やもんな!(肩組み)


席に着くと、花横から3、4番目。センステより少し後ろ。こーれは…こーれは絶景かな。

私はセンター席がくるような気がしていたのだけど、とはいえ本当にきたらびっくりする。そして、この人から聞く過去のキンプリ関係の席、全部異常にいいので(1stコンで重複して譲ってくれた席さえもめちゃよくて意味不明だった)くま、キンプリ担の人格大切にしてほしい。

見学席もよく見えるところで、えっ!?阿部さん来たらどうしよう!!!!!!!?って突然心臓高鳴ったのいちばん意味わからんかったですごめんなさい。来なかったですし(来なかった)。


ふわっと来た横アリですごくいい席に座らしてもらって、でも自担が出てくるわけじゃないので緊張感がそこまでなく、くまが差し出してくれたミンティアをもらいながら「ミンティアおばさんやん」と言ったり(メンバーが眠くなると黙ってミンティアを差し出す阿部さんのことを翔太が「ミンティアおじさん」と呼んでいまして)、「こんな席だけど、これ飲むわ」とくまがおもむろに出してきたブルーベリーをくれると勘違いして「ありがとう!」と勝手にもらう気満々で返事したり、それは最早どあつかましい。緊張感がないとかいう問題じゃない、しっかりしろ。


こんなヘラヘラした情緒が4年ぶりの王子たちを見続けた2時間半で深い感慨に変わるなんて、このときは思ってもおらず。3曲目ですでにトイレに行きたかったし…ちゃんと開演前に行ったのにね…。





センター席とはいえ、立ったら前の人の厚底がすごくてまともに前が見えなかったとか、オープニング映像が予想外に短くて気付いたらご本人たちが出てきてたとか、なんかそういう鈍臭いことは置いといて、とっても良い2時間半だった。

純粋に楽しくて、目がキラキラした気がする。「銀だこで見たあんたの目の輝き忘れられない」とくまに言われるくらいだから、マジでキラッキラしてたんでしょう。目の水分量がなにわ男子の大西プロレベルとか言うんだからガチ。あ、終演後に銀だこ食べたんですよ、おいしかった。


ゴリゴリの『ichiban』で始まった「和」×「洋」の世界。そういえば城を背負っていない。

King & Prince」という2次元の王子を具現化して世に解き放ったような、王子様の煮凝りみたいな彼らは、この鮮烈に世に焼き付けられた王子様イメージをどうしていくのかなと思っていた。

ずっと王子でいるのか、コンサートのセットといえば城はいつまでそこにあるのか、いつか江戸城みたいな城が建っていたりするのか。

そんなふうに離れたところから見ている者の勝手すぎるイメージをごっそりひっくり返して、赤い花をどかんと落とし、ichibanを引っ提げて始まった世界に目を奪われる。

あの落ちていく花のかたまりは、残像さえも鮮やかに美しかった。

そもそも私はド派手な演出が大好きで、花吹雪落とされるなんてDNAに刻みつけられている嗜好。そして何も知らずに行ったから(演出どころかコンセプトも知らなかった)、こんなに感激できたのもあるだろうなと思う。


知ってる曲は4曲くらいだった。でもずっと楽しかった。アルバムのキービジュアルと連動したロゴもどでかい暖簾も洗練されたイメージで、美しい。

パブリックの王子様イメージは強くありながら、元々ゴリゴリ踊る曲も得意にしていたよね。こういう切り口の魅せ方を選ぶ「今」に居合わせられて、私は大いに心を動かされた気がする。コンセプトをガツンと前に出してくるものって、なぜこうも心を打つのか。


センステより少し後ろのセンター席、周囲の花道をぐるぐるメンバーが回って、ええっ!?国宝のビジュアルをこんな距離で見てもうてええんですか!!!!?!?となる。ちょっとバグって鼻とか見てた。平野紫耀鼻、高〜!

私の持つ4年前の記憶と擦り合わせて、ああ皆さん大人になられたなぁと思った。それは顔も雰囲気も。グループとしても安定感があって頼もしくて、積み重ねられた年月を感じる。


平野紫耀くんという人はメディアの明るくてど天然なイメージとは別に、ある種の儚さを持っているなと思っていて、それによる掴めなさが魅力でもあり、なんだか不安定に感じてしまう一因でもあり。そういう思いは勝手に膨らむのもので、4年前もずっとうっすら持っていたし、この日もなんとなく気になりながら見ていた。今いるその場所の居心地はどうだい?

とはいえ、最初こそ「平野くんは今アイドルでいることが楽しいかな」と平野担の人格の私が彼を見つめていたけれど、時間の流れと共にこんな感慨もろとも払拭したMade in。平野くんは実にのびのびとしてそこにいた。

居場所なんだなぁ、と思った。

岸くんのことがツボで笑いすぎて自分のパートが歌えなくなったとき、そして思い出し笑いで当分歌えなかった平野くんが抜群にかわいかった。

平野くんは好むと好まざるとに関わらず、絶対的にセンターの風格を持つ稀有な人だけれど、私がこの日見たキンプリちゃんは、別のメンバーが、たとえば廉ぴちゃんがセンターでもしっかり成立していて、それは私が飛び越した年月につくり上げた世界なわけで、アイドルの化学反応っておもしろい。廉ぴがセンターのトレトレは最高。

みんな気付いてるかわからんけど、いや、気付かんと思うけど、「平野くん」と呼び出したらこれは完全なる平野担の人格です。


そう、平野担の人格がね、出てきたんですよね。

もう私の中にはいなくなったと思ってた、平野担の私。公演中、気付くと私は「4年前の続き」の気持ちになっていたと思う。目は平野くんを追いかけて、双眼鏡の中で「しょう…れん…しょう…れん……?」と延々どっちを見るか悩みながら2人を見ていた。そこは平野一択じゃないのかよ。


そして迎えた『シンデレラガール 』。やるのは知っていたけど、センステでやるとは知らなくて、目の前に並ぶ王子様衣装の人々に面食らう。何度も何度も聴いた歌い出しに、条件反射で目がキラキラした。

聞いてない!これ、こんな距離で見られるなんて聞いてない!

もう完全にタイムリープした。4年前の、その続きそのものだった。

遮るものなく、シンデレラガールを見てみたいと思っていたあのころ。ここにきて夢が叶った。あぁ、私、これを見にここに来たんだなと思った。なんだか心が浄化されて血まできれいになった気がする、知らんけど。今、健康診断に行きたい。


突然に彗星が現れて平野担だった私は自然消滅したような、そんな気でいた。特に未練もなかったし、阿部さんに出会うための道のりだったんだと理解していた。

でも、いたんだねぇ。ちゃんと心の中に平野担の私、確かにいたんだね。


シンデレラガールが終わると、心がすごくすっきりしていた。あ、平野担の私が成仏したんだなと感覚的にわかった。私を今の場所に呼んでくれた人、今の出会いを与えてくれた真紅の人。真紅なのか深紅なのか、今となっては私レベルのヲタクにはわからんけど紅い王。ありがとう、出会えてよかった。あのころの淡い気持ち、さよなら。



なにこれ、ちょっとした怖い話ジャン。





本当に楽しかった「Made in」。

4年前の私と会って、そのころ出会ったくまと肩を並べて当時の自担たちを見ていることも不思議だった。世の中は何があるかわからなくて、おもしろいね。

花道で目の前に来た廉ぴちゃん、その少し向こうの平野くん。どっちを見るか悩んで交互に見た。思ったより双眼鏡で平野くんをガン見した。横花に来たのを双眼鏡で見た途端に、双眼鏡越しに目が合った平野くんの野生動物み。これはうれしいというより野生の森の感慨。

おもろかったMCの「プロフィール帳」、じわじわした帝劇タイム。廉ぴの左利きと平野くんの描いたリサラーソン(みたいな作風のトナカイらしき動物)。


1週間経ってもまだキンプリコンの話をしているのだから、どんだけ楽しかったのか。お肌ももち、ぷる!になってウケた(ウケた)。King & Prince、相変わらずマジモンの美容液じゃあ!!!


普段見ている世界と違うものに触れた風通しの良かったこの横アリのことは、きっと10年後も思い出す。心に刻まれた秋の台風の日。