きのこ狩りの残党

私が見ているアイドルの世界

先週水曜日、乃木坂46のアンダーライブがあった。

乃木坂ちゃんは8枚目のシングルを出したころから、不定期にではあるけれど、シングルを出すタイミングで「アンダーライブ」を開催している。名前の通り、そのシングルで選抜に入っていないアンダーメンバーがするライブ。通称、アンダラ。


今回、27枚目のシングルでアンダーセンターを務める山崎怜奈ちゃんが私の推しメンなんですよ。ナニソレ?って方はこちらをどうぞ☟


「アンダー」と呼ばれている彼女たちのパフォーマンスの精度は高くて、私はパフォーマンスおばけが大好きなので、選抜よりもアンダーのパフォーマンスの方が刺さる。選抜とアンダーで担うものが違うだろうから、容易く比較すべきものではないかもしれない。けど、正直アンダー贔屓。


アンダーや選抜を行ったり来たりしていた卒業生にパフォーマンスおばけみたいな子たちが何人もいて、彼女たちが今のアンダラの礎になっているのは間違いない。残っているのはその姿に感化されて、鍛え上げられて、一緒にステージをつくった子たち。乃木坂ちゃん文化系なイメージやのにアンダラめっちゃ体育会系。


一種のフラストレーションが熱になって爆発するアンダラ。でも決して「アンダーだから」なんていう悲壮なものでも、「なんとしてでも這い上がる」みたいな不屈の精神を感じる重いものではない。胸の内に秘める闘志や野心はそれぞれにあるとして、ライブをやる以上は最高のものをと心を揃えて、“プロのアイドル”として見せてくれる、かっこいい、かわいい、キラキラしたライブ。

私は、アンダラには信頼しかない。


とはいえ、本当は今回のアンダラを観る予定は特になかった。推しメンのターンがきているとはいえ乃木坂からはもう離れている身なので、またこっそり遠巻きに見守りつつ、1シングル1回はミーグリ(握手会的なオンラインのトーク会)取ってみようかな、くらいの気持ちでいたから。


ボーっとヲタクをしていたGW明け、やばみ辰巳担の人から「れなちが次のアンダーセンターって噂あるで」ってLINEが来て二度見した。ええぇ!?

思いもよらなかった。3期、4期生が台頭してきている今、れなちにセンターが回ってくるのか…。けど、最近クイズやラジオで爪痕残しているから、あってもおかしくないな。もしれなちがセンターならシングル買わなあかんし、アンダラも観たい。ちらっと日付を確認する。


5月26日(水)16:30開演。


どっど平日〜!!!

まあなんとかしよう。と思っていたら、あれよあれよという間に情報解禁。本当にれなちはアンダーセンターになっていて、私は秒速で、自分のスケジュールにその予定を組み込んだ。





26日夕方16:30、合法的に会社を脱出した私は家にいた。合法とは名ばかりのダメ社会人。マジックきのこかよ。ヲタクはそういう要領が抜群にいい。


パソコンから映像をキャストした。ジャニネオンライン経由じゃない配信ライブは初めてで勝手がわからずドキドキしていたけれど、なんか調子良さそうやな?うん、いける。謎の確信でお茶など飲んでいた。


その確信、冒頭で秒で爆破。


開始直後のVTRは、れなちが架空のラジオ番組のパーソナリティをしている設定。うわー!!いよいよ始まる…れなちやからラジオ風の設定かあ。ホンマに座長なんやな…!って涙が込み上げてk…きた時、画面がフリーズした。


見慣れた輪っかが画面の中央で「やっほー!」とでも言わんばかりに張り切ってくるくるしている。

いや、張り切んな張り切んな。


これ、すぐ解ける?無理か?どうするのがいちばんいいのかわからず、パソコン触ったらそもそもパソコン自体フリーズしている…こいつも8年選手くらいか…パソコン界で言えば婆かな…?

なんて様子を見ているうちに結構時が過ぎた。これは、、ってとりあえずスマホでログインし直したら、1曲目、れなちがセンターの『錆びたコンパス』が始まっているどころか、なんなら2番。


もう!ここぞという時のソレ!やってんな!!!


大事なライブの1曲目、そもそも登場シーンも見れないってどうなってんの?誰か今すぐドラえもんを呼んでくれ。猫型ロボットが無理ならデロリアンを手配せよ。


涙が込み上げてきた時に瞬殺でフリーズだったので、もう笑うしかないの。いうてもこういうの慣れてるし?慣れたくないけど、慣れてるし?


とりあえずパソコンの復旧は後回し、小さなスマホの画面をガン見する。ゆる〜く巻いて外ハネさせている髪の毛も、ライブ仕様にばっちばちに上がったまつ毛も、『錆びたコンパス』のために作られた衣装も全部かわいい。


そう、衣装がね!とにかくかわいいの!!それがとってもうれしかった。女子ドルちゃんの衣装って布やパーツがたくさん使われていて繊細で、美しくできていて、好みのものを見た時には胸の高鳴りを覚える。

今回はまさにそれ。ドンピシャに好みだった。天才!白地に緑とピンクの生地が使われていて、同じようでいて襟とか袖とか3パターンくらいあって違いを探すのも楽しい。何が天才って左右の靴下の色がブルーグレーとピンクで違ったのが、それはもう抜群にかわいかった。


しょっぱなからのトラブルによって涙は引っ込んでしまったけれど、れなちがセンターで歌い踊ることがうれしくて、謎に膝を抱えながら微笑んでしまった。すごい、ホンマにセンターやねんな。ホンマにホンマに座長なんやな。

スマホ越しにチラッと確認したテレビ画面では、まだ映像が固まったまま輪っかがくるくるしていた。「許せない!」今日も心の菊池風磨先生が絶好調である。


結局3曲目でパソコン復活させてからはなんとか最後まで観れたけど、「え、この展開は梅子らしすぎん?」って、どこに行ったって自分が謎に鈍臭いことを痛感したし、絶対後で笑いにしようと心に決めた。関西人だもの。





アンダラは、その時のシングルでアンダーセンターをする子が座長になる。演出も座長の持つ個性や特色、そのイメージに合ったものに偏ることが多い。


今回、れなちは、「みんなが楽しい、みんなが輝けるライブにしたい」としきりに言っていた。そこには、こんな思いが込められている。

私はずっと“じゃない方”の人間なんですよ。選抜に入っていない、フロントじゃない、特に目立つタイプではない。なので、じゃない方の人間からすると、ライブ映像やMVで「映ってない」悔しさはすごくわかるんです。そういう気持ちは、研究生の2年間だけじゃなく、アンダーメンバーとして活動する中で、感じてきた事でした。そんな中で、私が真ん中に立つんだったら、後輩にそんな感情は抱かせたくないじゃないですか。


強いな、って思った。


もちろん最初から強かったわけじゃないに決まっている。10代後半から20代にかけての女の子がこんなに強いわけない。

8年間乃木坂にいて、選抜に入ったことはない。その事実にもがいた日もあって、「映っていない悔しさ」を感じていた事実がつらい。私まで悔しい。見ている方が悔しいのだから、本人はもっともっと悔しくてしんどくて当たり前。それを本人の口から聞くのはさらにきつい。

「悔しい」が当たり前の顔をしてピッタリ隣を走っている。そのしんどさは一体何に喩えられるだろう。ここまで続けてくれたことは当たり前のことではないと痛感する。


だからこそれなちには、アンダーでもがいているメンバーの苦しさも、選抜に上がりたい気持ちも痛いほどわかるはずで、そんなれなちにひとつのスポットが当たったこの時、周りにも目を向けられる、そのために行動するだけの力があった。それは、8年間の経験の積み重ねが織りなすものに他ならない。

華やかさの裏の過酷な世界で耐え抜いてきた力。その力を周りの子たちを照らすために使えるやさしさ。私の推しメンは、かっこいい。





言葉の通り、メンバー13人にスポットが当たる、本当に楽しいライブだった。


今回のアンダラは、卒業を控えている伊藤純奈ちゃん、渡辺みり愛ちゃんの卒業ライブを担う側面もあった。けど、それだけに偏るでもなくみんなに見所がある構成で、しかもそれぞれの得意なことややりたいことが生かされていて。

その上ファンから募集していたリクエスト曲や演出も上手に組み込まれているのだから、築地の山盛りの海鮮丼よりデザートビュッフェで欲張って盛り盛りに盛ってきたスイーツより盛りだくさんなのよ。こぼれるよ。

しかも何がすごいって、そこに無理がないの。切って貼り合わせたような感じじゃなくて、流れも自然で、これが1週間のリハでできたって知って私は驚きを隠せない。すごいな〜!!!知らない曲だってあったけど、それでも約2時間半ずっと楽しかった。


「アイドルとして成長するにはすごく恵まれたチャンス」だというアンダーセンターを「今、私が務めていいのかな?」「ほかの誰かに経験を積ませた方が、乃木坂46というグループにとっても良いんじゃないかな」って考えることのできるれなちだから、視野が広く、たくさんの人に笑顔も喜びも届けられる、こんなに楽しいライブをつくれたのだと思う。

同期の純奈とみり愛のラストライブでもあったから、余計にグループ内でも偏りのないフラットな場所にいるれなちが敵役だったと、素敵なライブを見終えて、そう思います。


でもやっぱり、何より、横浜アリーナに組まれたステージのセンターで歌い踊るれなちがとっても輝いていて、ど真ん中にれなちがいる景色が愛おしくて、鳥肌が立つほどうれしかった。



✎ いくつか心に残った曲のメモ。

𓃾『錆びたコンパス』
𓃾『風船は生きている』
𓃾『My rule』
𓃾『ここにいる理由』

オープニングからの4曲は、れなち、みり愛、純奈でセンターをつないで、またれなちに戻ってくるセトリ。絶妙!曲の緩急も、順番にセンターをする流れも抜群に良い。みり愛も純奈もパフォーマンス力があるから、錆びたコンパスでれなちを挟んでフロントにいてくれるのもうれしい。

風船は初めてれなちがフロントになってうれしかった特別な曲、My ruleは初めて行ったアンダラで観たし、衣装が抜群におしゃれでかわいくて、アルバム個握でその衣装を間近で見て感激した曲。

そして、ここにいる理由。私にとっては圧倒的存在感の崇高なアンダー曲。多分ファンはみんな一目を置く、世間に見つからないのがもったいない傑作。この曲のセンターだった卒業生の伊藤万理華ちゃんは神の如きパフォーマンス力で、その無表情のドール感は鳥肌を誘うもので、とにかくこの曲は至高。

この曲でセンターをするれなちを見られる日がくるなんて思わなかったから度肝抜かれたし(ただしスマホの画面だった)、れなちの涼しい目の美しさが横アリのステージのど真ん中で解き放たれるなんて、なに?なんのスペイベ?神なの???


次の日、この日の『ダレハナ』(れなちのラジオ)を聴き逃ししたら、ここにいる理由のリハの音がガンガンに入っていたので聴いてたらネタバレだった。笑


𓃾『Route246』

この曲は小室哲哉さんが作曲してくれた去年の夏の配信限定シングル。選抜メンバーが歌う表題曲なのだけど、ファンに取ったアンケートから「アンダーでも表題曲をやってほしい」というものを選んでセトリに組み込まれたもの。


これがね、すっごくよかった。私泣いたもん。

この曲でセンターをした中村麗乃(れの)ちゃんがまずかわいい。めっちゃくちゃかわいい!お人形さんみたい!しかも身長167センチ、スタイルも良い…!(れのちゃん見てほしいから謎にリンク貼ってる)(この記事でここだけ)(推しメンちゃうんかい)

Route246って乃木坂ちゃんには珍しいお腹や足が結構大胆に出ている衣装が新鮮なのだけど、その歌衣装を着ていた。アンダーという扱いをされている彼女たちやけど、こんな姿見たら選抜と遜色がない。みんなよく似合っててかわいいし(アンダーとはいえみんなお顔抜群にかわいいのでね)、外野が見れば選抜とアンダー入れ替わってたってわからんやろなと思う。


特筆すべきは、この曲のパフォーマンス。ものすごくまとまっていて衝撃的に良かった。私は心を動かすパフォーマンスには「心の向きを揃える」がとても重要だと思っている。私にとって、ね。

アンダラには心の向きがぴったり揃っているのがわかる瞬間が必ずあるけど、そのひとつがこの曲だった。

逆光シルエットの照明もスモークも相まって、めちゃくちゃかっこいい。そもそも世代的に小室サウンドが響くのよ。おれたちの小室サウンド!正門の乙女の旦那さんがサブスク使いこなせてなくて車に乗るたびにglobeがかかるらしいけども、私その車乗りたいもんね。


テレビで見たこの曲でこんなに感動したことないから不思議だった。内容があるのかないのかわからん歌詞(ごめんなさい)にも深みまで感じるので、こういうのってパフォーマンスがモノを言うんだなと思う。

ほんまに、あまりに良くて心が震えてしまって、この子たちはこんなに人の心を動かすパフォーマンスができるのに、なんで格下扱いされてるのだろうって悔しくなった。私にとっては、これまでのRoute246を凌駕する世界だった。


𓃾『嫉妬の権利』

全員がセンターをするセトリやったから、れなちばっかりがセンターをしていたわけじゃないのだけど、でもやっぱりセンターをする曲が割と多かった。

別に推しメンはセンターじゃないと!なんて思ってるわけじゃない。それこそ応援し始めたころは下手側の端っこ、機材が当たるような場所だったし。だから、かな。そこから序列を上げてきたれなちを見てワクワクしてきたから、とうとうセンターに立って、既存の曲をセンターでパフォーマンスすることに感激してしまう。

れなちはニコニコかわいい系の曲もいけるけど、どちらかといえばクール系とかバキバキかっこいい系が合う雰囲気だと思ってる。だから、かっこいい『嫉妬の権利』のイントロでカメラにどん!と抜かれたことにすごく高まった。キターーー!!ってなった。

自分の「好き」が真ん中にいる景色のうれしさや特別感を感じさせてくれてありがとう、ってめちゃくちゃ思う。


𓃾『日常』

この曲は私が離れてからの曲なのであんまり知らなかったのだけど、やばみ担が好きで名前だけ知っていた。

初めてちゃんと見たけど、すごい!めっちゃかっこいい!フラストレーションを爆発させるような歌詞、それを完璧に体現する気迫。センターの北野日奈子ちゃんが最高に良い。

北野も2期生で、彼女は選抜とアンダーのどうしようもない溝みたいなのを行ったり来たりしているイメージで、しんどそうな期間が長かったのだけど、最近はそれを抜けて、ものすごくかっこいい人になった。経験が人をつくるんやなってわかる立居振る舞い。やばみ担と北野のことめっちゃ褒めたもんね。


この曲もやっぱりベクトルがぴったり合っているパフォーマンスが抜群。人数が多ければ多いほど息を合わせることは難しいやろうから、それを思うとただただ感嘆する。


𓃾『乃木坂の詩』

結成時から歌い継がれてきたアンセム的な1曲。ライブではいちばん最後に歌われる定番の曲で、両手には乃木坂のシンボルカラー・紫色のサイリウム。ファンもみんな紫×紫にするので、会場は小島のソロ、みたいな状況になるわけです(唐突な小島)(なぜ小島)。

デビュー時も人気が出てからも、最後はこの曲。何度も見てきたこの曲でれなちがセンターに立っている。何度もしつこいけど、この曲でセンターに立っているのって本当に座長!という感じがした。


れなちの存在が、乃木坂の歴史の中に明確に刻まれた感じがする。ポジションがどこだって私はれなちが好きやけど、でも、“そこにいた証”が残ることってファンをこんなにもうれしくさせるものなんだと私も初めて知った。





「何者でもない私たちをアイドルにしてくれてありがとうございます」


ライブの終わりがけ、曲中にれなちが言った。

すごい言葉だと思った。刺さった。


そんなの、こちらこそ、何者でもなかった女の子たちがアイドルになる姿を見せてもらって、たくさんうれしいとかたのしいとか大好き!を味わわせてもらってありがとう。「ありがとう」がいくつ並んでも足りないな、とこういう時に思う。ドリカム構文では補いきれん。


女の子のアイドルは、儚い。

男性アイドルよりも時間が限定的であり、人の出入りも激しい。アイドルでいられる時間が圧倒的に短い。

乃木坂という枠は同じでも選抜制度を取っているから、ずっと同じメンバーでパフォーマンスをするわけではない。その枠の中で順番をつけられて競わされる彼女たちは、ある意味、男性アイドルよりも孤独で過酷な中にいる。

その儚さが痛い痛いと胸にしみるし、だから、より美しくも見えるのだろうか。


そんな期間限定な、今だけの27thアンダーメンバーのことが私は大好きになった。

数ヶ月後、次のシングルが出ればバラバラになる彼女たちが同じベクトルで見せてくれたライブは最高だった。もしかしたらアンダーにいるのが不本意な子もいるかもしれないけど、それでもみんなが心をひとつに寄せて全力でライブをしていたのが伝わった。


彼女たちには、同じ場所でずっとアイドルをやっていけるわけではないからこそアイドルとして周りを照らせるこの時を楽しんでほしいと思うし、少しでも長く、多く、アイドルとして輝いていた時間を残してほしい。


繰り返し書いていること。

私はれなちが生き生きと楽しくできるのならばそれがいちばんいい。選抜にこだわりなんてなくていいし、自分の見つけた道を歩んでほしい。それが大前提にある。

それでもこのアンダラは夢を叶えてもらった気持ちだった。0番で歌い踊るれなちはかっこよくて美しくてかわいくて、最高の27thアンダーセンターで、この日見た錆びたコンパスも、ライブの風景も、ずっとずっと忘れないと思う。


ずっと見てみたかった、れなちがど真ん中にいる景色を見せてくれてありがとう。楽しい夢みたいな時間をありがとう。笑顔も泣き顔も最高にかわいかった!!


山崎怜奈ちゃんのこの先の道に、27thアンダーメンバーの子たちのこの先の道にも、ひとつでも多く夢が叶う時が、楽しく笑う時があることを願っています。